賢く生きる恋のレシピ

winter『賢く生きる恋のレシピ』を観る。サラ・ジェシカ=パーカーとエレン=ペイジを前面にたてたパッケージは、よくある恋愛ものと見紛う感じだけれど、さにあらず。主人公は下腹の垂れた男やもめの大学教授を演じるデニス=クエイドであり、居候にトーマス・ヘイデン=チャーチを配した正統ドラマという感じの構えで、たいした事件もなく、悪人も出てこない話ではあるのだけれど、大学教授は偏狭で、優等生の子供は偏屈でイライラしており、人生は何かとままならない。知性があっても生きるのはそんなに楽じゃない、という話がもちろん明るいはずはないのだけれど、救っているのはT・H=チャーチである。うまい。観ているうち、あの名作『ワンダー・ボーイズ』を思い出したのだが、そもそも『ワンダー・ボーイズ』を名作と称えてくれる人は少ない。インテリの憂鬱というのは観る人を選ぶテーマではあるものの、読後感自体はそんなに悪くないと思ったのである。監督のノーム=ムーロはCF出身という話で、初監督作品なのだけれど、オシャレなところはまるでない。特にデニス=クエイドのしょぼくれた感じはただごとではなく、ちょっとやり過ぎの感すらあるのだが、全体に豪華なキャストはよく仕事をしており、これが劇場未公開というのはやはり問題と考えるべきなのではあるまいか。