『闇の列車、光の旅』を観る。強制送還されてホンジュラスに舞い戻った父に連れられてアメリカを目指す少女と、成り行きで組織に追われるギャングの道行きを描いたロードムービー。不法移民が貨物列車の屋根に乗って北を目指す姿が、昇っては沈む太陽と大地を背景に描かれ、生きることの過酷と対照をつくる。この邦題はそのコントラストを表して原題の『Without Name』よりも詩情に富んでいる。
最後にはメキシコの国境を越えるという話だが、大きな壁が行く手を阻んでいるというイメージのそれではない。人々は厳しい生活を送っているが、共同体を持たないというわけでもない。彼岸とわたしたちの差異は僅かであり、何故か行き先だけが大きく異なっている。