『鮮血の美学』を観る。『スクリーム』のウェス=クレイヴンが初めてメガホンをとった1972年の作品で、40年後の今にしてみれば何だか異様な雰囲気をもった事件ものの映画。冒頭、実際の話に題材をとったという注意書きが入るのだけれど、その実、ベルイマンの『処女の泉』をベースにしているのだからサブカル的な韜晦の風味が効いていて、後の諸作に通じるところがある。話のほうは陰惨さとコメディパートが入り交じり、今となっては、そこに年輪も加わっているものだから、失われた同時代性が描かれている狂気を一層際立たせて、おそらくは意図せぬ怖さを生んでいる。
邦題は、当作品のスプラッタ映画における歴史的価値に注目したものなのかもしれないが、スプラッタの起源の近いところにはあるとして、言葉のイメージでは美学というより考古学に近い。