黒く濁る村

Tateshina『黒く濁る村』を観る。最近観た『ビー・デビル』と同じく、韓国の寒村を舞台としてドロドロとした因縁がもたらす悲劇を題材とした映画だが、『ビー・デビル』がスプラッタ的な展開に雪崩れ込んだのに対して、こちらは30年前の経緯と現代を往還する横溝的サスペンスの系統に位置している。主人公の父の死の謎が、クセのある登場人物の素性とともに徐々に明らかにされていくという話が、全体で161分という、やたらと長い尺で語られるので観ているうち、細かいところはどうでもよくなってしまう。それが欠点かといえば、恐らく細部がそれほど作り込まれた話でもないので、もとよりこれは雰囲気を楽しむ映画なのであろう。かつて本邦でも、『犬神家の一族』だとか『湯殿山麓呪い村』だとか、地方の土俗を背景においた映画が流行ったことがあったけれど、かの国でも同じような気分にあるとみえて、「ソウルのひと」が異人として共同体の因習を断ち切るという構造が通底しているあたりが興味深い。本作では、まさにソウルから左遷されたパク検事が、敵かと思いきや味方として主人公を助けるという設定でキャラクタとしてもいい味を出していて、うまいアクセントになっている。