『おとなのけんか』を観る。ロマン=ポランスキーの79分ほどの小品で、登場人物が4名の密室劇であり、原題には『CARNAGE』つまり「大虐殺」というタイトルがついているけれど、同名のオリジナル舞台のタイトルをひいているにもかかわらず、いかにもポランスキー的な欧州風のユーモアであり大仰ですらあって、『おとなのけんか』という邦題のほうがしっくりくる。
こどものけんかを巡って被害者の家で話し合うことになった二組の夫婦が、洗練されたやりとりの果て、次第に本音の言い合いとなり、ついには男女の対立に至るという舞台劇の映画化で、殺伐としたやりとりと登場人物の類型的な安心感が微妙なバランスにあって何だかやたらとおかしい。役者は誰も達者であり、ジョディ=フォスターもケイト=ウィンスレットもいいのだけれど、冷酷な弁護士の父親を演じるクリストフ=ヴァルツは秀逸という他ない存在感で、その顔つきはあまり好きではないのだけれどちょっと見直す。