ギヴァー 記憶を注ぐ者

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』を読む。『ザ・ギバー 記憶を伝える者』の新訳版。本邦で人気がある貴志祐介の『新世界より』はその世界観において本作の影響を強く受けているだろうという感じの物語だが、三部作の第一部、唯一の邦訳である本作だけではあれよりも随分コンパクトな印象となっている。
物語の仕掛けは実は『アルジャーノンに花束を』を彷彿とさせ、その結末から受ける印象は、全く異なる話でありながらコリン=ウィリスの『航路』に似て、つまり泣ける。児童文学に分類されはするが、もちろん子供向けという話ではない。