『ステキな金縛り』を観る。三谷幸喜の監督・脚本の法廷劇で、結構な豪華キャストだけれど、アリバイを証明するのが落武者の幽霊という荒唐無稽な話を成立させているのは、ひとえに主演の深津絵里であろうと思うくらいにヒロインのキャラが立っており、40歳目前というにはあまりに若い。いや、歳がどうというつもりはないですけど。
主役がドジな弁護士というのも定型なら、対する検事が中井貴一、落武者が西田敏行という鉄板の配役で、一方、深津絵里のパートナーが海坊主のような木下隆行だったり胡散臭い行者を市村正親にやらせてみたり、微妙に効いているスパイスで全体が引き立って、いつもの三谷幸喜といえばいつもの通りなのだけれど、おいしく出来た定番料理のようで悪くない。ほとんど自動的に愉快な感じになるのが定番の強みであって、作家のキャリアの賜物であろう。趣味からすれば草薙剛登場のあたりがいかにも余分に思えるのだが、それも含めてやっぱり三谷幸喜らしいのである。