ひと頃、武田ランダムハウスジャパンから出た『アインシュタイン その生涯と宇宙』の翻訳がびっくりするくらい酷いという騒動があって、質より量とばかりコンスタントに出版を続けなければならない業界構造の問題まで取り沙汰されていたけれど、『外事警察 CODE:ジャスミン』を読み始めて30ページくらいで何だかそのことを思い出す。草稿がそのまま印刷されてしまったような文章で、読み進めるのがひどく辛い。麻生幾の小説は、少し生硬い感じとはいえ、ここまでの印象はなかったのだけれど、上手い下手というよりは、推敲の手間をかけていないのではないかと疑うくらい同語反復が多かったりする。映画の封切りに乗っただけの読者である以上、偉そうなことを言う気もないのだが、いろいろもったいないと思うのである。