『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』を観る。
鄙びた田舎にキャンプにやってきた大学生の一行が土地の怪しい男に付き纏われ恐ろしいめに遭うという、連続殺人鬼ものの黄金パターンを解体して、白人貧困層のタッカーとデイルが大学生集団の偏見によって騒動に巻き込まれるという話。こうした作劇上の定型が、定型に嵌っていること自体を風刺した話はあったとして、立場を逆転した発想というのはそういえばこれまでなくて、階級を象っている固定観念のようなものに思わずギクリとしたものである。それは相当に根深い。
アイディアはいいとして、タッカーとデイルのキャラクターがはじめからそれなりにいい人というのは、 ネタ殺しなのではあるまいかと思ったものである。冒頭のステレオタイプぶりがワクワク感を誘うだけにもったいない。
それなりにスプラッタな展開もあった上で、結局のところサイコキラーものに回収されるというのも、いろいろ残念と思わざるを得ないが、これは大学生が酷い目に遭うという、いや奴らは酷い目にあって当然という、背後に隠れているもうひとつのテーゼの強さというものであろう。