『フェア・ゲーム』を観る。イラク戦争当時、ブッシュ政権がCIA工作員の身元をリークしたプレイム事件に基づく。工作員をナオミ=ワッツ、夫の元大使をショーン=ペンが演じていて、実際の手記をベースとしているという話なので、国際陰謀もの風のスケール感を醸し出そうとする脚本上の試みはあるとしても、結局のところ実話が垣間見せる泥臭い雰囲気は打ち消しようもない。その辺りは映画にとっては良い方に作用しており、たとえばチェイニー副大統領の補佐官であるリビーがCIAに乗り込んできて結論の方向を示唆する場面は、噛み合わないやりとりが妙にリアルで、この物語が実話の写しであることを強く意識させる。ナオミ=ワッツは少し老け込んで実在のヴァレリー=プレイムに似ているとみえなくもないし。一方、ちょっと苦手なショーン=ペンは相変わらずのトリケラトプス顔で表情に乏しく、自分の信条に基づいて言いたいことを言っているわけで、特に演技のようには見えないと、どうしても厳しくなるのだが、全体としてはそんなに悪くない。
これもまたブッシュ政権がイラク戦争に傾斜していく過程を題材としているのだが、実際にも司法によって裁かれたリビー補佐官が悪玉として登場するくらいで、実際に奥の院で何があったのかという事実の整理が直接的に語るようになれるのは恐らく30年がとこ向こうであろうと思えば、そのこと自体がリアリティを生んでいるわけである。いやはや。