『ラバー』を観る。うち捨てられた廃タイヤが理由もなく動きだし、その異能を使って次々と人を襲うという話なのだが、それだけの話ではなくて、これを見守る人々が配置されることで映画の中にメタレベルの要素を持ち込んでおり、この能書きについてのシークエンスが一通り織り込まれるという、ちょっと前衛的な作りになっている。アメリカの片田舎を舞台にした英語劇でありながら、実は独り善がりなフランス映画なのである。アメリカンなホラーを期待した向きには残念ながら、あまり面白いものではない。監督は脚本から音楽まで一人五役の活躍だが、悪い意味で自主制作映画の風味が横溢しており、この82分は些かきつい。