そういえば後れ馳せながら桜庭一樹の『傷痕』を読んだのである。と打ち込んで、どうでもいいことだけれど、iOSが「後れ馳せ」を変換できるのには感心した。少なくとも以前のMS-IMEあたりには及びもつかない境地であるはず。
本作は、突然世を去った「キング・オブ・ポップ」に関係した人々が、それぞれの人生に大きく関わったこの人物を回想するかたちで話が進む。日本を舞台にはしているが、モデルとなっているのはもちろんマイケル=ジャクソンであり、現実の出来事を強く連想させるにもかかわらず筆致は縦横であって、終末のイメージが錯綜する冒頭数ページからしてその想像力は無礙である。面白い。