『容疑者、ホアキン・フェニックス』を観る。ホアキン=フェニックスの例の引退騒動自体は、この映画のための嘘であったということになっているし、『The Master』で俳優としても復帰するという話だから、作品についてもドキュメンタリーではなく、いわゆるモキュメンタリーであるという理解が正しいのだろうと思うのだけれど、内容は半端なところがなくイタイタしいもので、観ているほうはかなり居た堪れない。醜く肥り、薄毛に髭面となったホアキンのヴィジュアル的なインパクトも相当なものである。
ケイシー=アフレックの初めての監督作ということだ。相応に野心的な演出が加味されているとは思うのだが、結局のところ、奇行と演出の区別などつくはずもない。とはいえ、冗談では済ますことができない雰囲気が漂っていることは確かである。メディアや世間に対する異議申し立ては、同じ力で当人を深く傷つけていると思われ、それなりの主張はあったとして表現方法はこれでよかったのかどうか。兄であるベン=アフレックの監督としての力量が傑出しているがゆえ、ケイシー=アフレックの方向が捩じれているのではあるまいかと心配になったものである。
どうでもよいことだが、ベジタリアンであるはずのホアキン=フェニックスが一体、何を食べたらあれほど肥ることができるのであろうか。