『幸せの教室』を観る。トム=ハンクスが監督、脚本、主演の三役で、ジュリア=ロバーツと共演しているというだけで相当に華やかなイメージがあるけれど、大掛かりなエンタテイメントというよりは、経済危機後の幸福とは奈辺にありやという問い掛けの物語であり、まとまりのよいドラマとなっている。製作者としてのトム=ハンクスはテーマの選び方も誠実であり、かなりきちんとした人だと思う。
大手小売りの現場で、それなりに活性化された働き方をしていた主人公が突然、解雇されて途方にくれるのだが、コミュニティカレッジのクラスに通ううち、これまでとは違う生活のなかに幸せを見出すという話で、つまり生活の立て直しに向けてどのような価値観を重視すべきかというロールモデルを示すという点で、宗教色こそないものの、伝統的なハリウッドドラマの系統のひとつに連なっている。
脚本は主題に沿って明快である。あらかじめ家族がいない設定となっている主人公を助けるのは隣人であり、共同体が運営する大学であり、古い友人で、尊重される価値観は倹約とリサイクルであり、知識の習得である。柵に囚われず、人々の群れのなかに生きよ。知識は身を助ける。軽量化された人生は気持ちいい、という感じの前向きなメッセージが説教臭さもなくストレートに語られていて、もちろんハッピーエンドなので満足感は高い。