実はいささか現実逃避の入った流れがあるのだが、滅亡ものついでということで、懸案となっていた『日本沈没』の漫画版を読む。さいとう・プロのものではなく一色登希彦によるビックコミックスピリッツ連載版。最近では漫画というものを殆ど読まないので、日本沈没ファンとしては読んでおかねばならないと思いつつ、放置してあったのである。
2006年版の映画にあわせて始まり2008年まで続いた連載で、この実写に合わせたイメージもうかがえるのだが、「大爆発で全て解決なんてことがあるはずない」という作中のセリフにもある通り、「あの」展開には批判的な内容となっていてなかなか面白い。相次ぐ天変地異によって非日常的な騒擾が展開していくあたりにはオリジナルの『日本沈没』はもちろん、『デビルマン』や西村寿行的な記号もあって、本邦の滅亡好きであれば読むべき内容となっている。
それはともかく、地震や津波、事後の市民生活といった描写は311を想起させる不気味さで、日本国総理大臣のイメージが菅直人に重なるに至っては奥付を思わず確認したくなる感じ。2006年版の実写『日本沈没』にはこういう類いのリアルさが一切なかったことを考えれば、漫画作者の手柄は大きい。
原典の名場面を大事にしている雰囲気もあって、渡老人が登場するのも重要だし、全15巻の最後が「第一部・完」となっているあたりは、おそらく遊び心であって、オリジナルの読者はここでニヤリとしなければならない。