『裏切りのサーカス』を観る。いささか陳腐な邦題がついているけれど、ル=カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の映画化で、ゲイリー=オールドマンがジョージ=スマイリーを演じている。監督はオリジナル版『ぼくのエリ』のトーマス=アルフレッドソンで、どの都市を撮っても北欧風の暗い陰を纏っている気がする演出は十分な作家性を感じさせるもので、冷戦期のスパイ戦に奥行きを与えている。うまい。
話の後先は原作とはだいぶ異なるし、いろいろと手が加えられてはいるのだけれど、それなりにうまく消化してあって脚本の出来も悪くない。
巨匠の映像化に相応しく、役者陣も大層な実力派揃いであって、コントロールを演じるジョン=ハートは僅かな場面にしか登場しないにも関わらず立派な存在感を醸し出しているし、コリン=ファースやマーク=ストロングあたりの演技も見事。さすがに明示的には説明しきれないあれやこれやを、うまいこと表現している。我らがシャーロックこと、ベネディクト=カンバーバッチがピーター=ギラムの役で出演していて、これもなかなかかっこいい。
全体としてよく出来た映画であり、抑制的な展開であるにもかかわらずこの128分はきちんと構成されており、全く長くない。