『遠すぎた橋』を観る。今さら言うまでもなくあまりにも有名な欧州大戦映画の大作で、これまたよく言われるようにオールスターキャストでありながら世間的な評判はあまり高くないのだが、好きである。題材がマーケット・ガーデン作戦で、誰が描いても連合国軍の負け戦になるのだから仕方ないこととはいえ、たとえば『バンド・オブ・ブラザース』のアイントフォーフェンにはあった戦術的な高揚すらないのだから商業的にウケないというのも宜なるかなという感じはする。だがしかし、この映画の製作された1977年は冷戦のさなかであって、時あたかもサイゴン陥落を目の当たりにしたばかりの西側で、こうした色調の映画が作られたことにはやはり意味があると思うのである。政治的に立案された作戦が、技術官僚の采配によって難度を増していくというあたりが生真面目に描かれており、このあたりのリチャード=アッテンボローの愚直さは嫌いでない。戦場においても、ありがちな英雄的行為はついぞ描かれることなく、ロバート=レッドフォードさえ状況の前にヒーローたり得ないのだから、これは無論、確信犯なのである。
一方で見せ物としては十分に金のかかったものであり、C-47とグライダーからなる大編隊の離陸や降下シーンには類がない。