『5デイズ』を観る。2008年の南オセチア紛争を題材として、渦中に身を投じたジャーナリストが戦争犯罪を撮影したメモリーカードを守りながら脱出を図るという話を軸にストーリーは展開する。
原題が『5 Days of August』であり、もちろん8月の5日間で終了した紛争のこととはいえ、やはり『The Guns of August』を想起して歴史の波間に埋没しつつあるこの争乱の経緯が語られるのだろうという大方の期待を裏切り、話のほうはアクションとして類型化されていて、固有の事情が腑に落ちるつくりにはなっていない。北京オリンピックの開催の陰にあって国際的な関心を惹くことなく終始したあたりを批判的に語るという体裁をとりながら、つまり制作サイドにあるのも同根の無関心であるという、ちょっと罪深い構造になっている。
それというのも残念ながら監督がレニー=ハーリンである。ちょっと意外なくらい派手なドンパチで、グルジア軍の全面協力を得たという触れ込みなので装備のほうも重量級なのだが、徹頭徹尾、中途半端なロマンスを絡めているので、戦闘でさえ添え物に過ぎない。せっかく、サアカシュヴィリ大統領の役でアンディ=ガルシアが出ていても、慎重派のはずが次の場面では一転、主戦派という描き方では何のための登場なのかもよくわからない。
全体として、高尚な企図が監督の趣味でどんどん俗化した結果という印象があって、都合のよすぎる展開は笑ってしまうほどだが、分かり易いといえばかなり無反省に分かり易いのである。