『アイガー北壁』を観る。難所の代名詞というべきアイガーの北壁、時代はベルリンオリンピックの前年だから装備というには心細い当時の登山具で極寒の山頂を目指すドイツとオーストリアそれぞれのペアが、登頂を断念し下山する途中に遭難した史実をもとにしたドイツ映画で、トニー=クルツの悲劇的な最後を扱っており、寒くて、苦しくて、ついには観るのが辛い。オーストリア併合の時代背景とか、語り手として登場する幼なじみとの恋愛要素とか、物語としての仕立てはいろいろあるにして、トライアルと挫折の冬山シーンにすべては凝集されており、後半の1時間はその時間配分以上に強烈な濃度を感じさせる。