カルニヴィア

『カルニヴィア』を読み始めている。『ミレニアム』からこっち、似たような物語が出てきてもよかったはずだけれど、わずかに『湖は餓えて煙る』あたりに痕跡を認めるとして、なぜかハードボイルドとしての仕立てにその趣向は向かっていたのである。ダニエル=クレイグがミカエルを演じようというのも同じ解釈の線上にあって、気候条件の厳しさとメンタリティを同一階梯で消化する映像主義的な傾向が巷間には存在する。それはともかく、『ミレニアム』のオマージュとしてのハードボイルドというのは、ちょっと違うのではないかと思うわけで、それは土地の歴史を背景に屹立する、よく考えると気恥ずかしいくらいにキャラの立った小説でなければならない。
『カルニヴィア』はこれまでのところ、『ミレニアム』とは全く異なる物語でありながら、舞台となるイタリアの地勢を血肉として『ミレニアム』に似た背骨を立ち上げることに成功しており、そもそも版元もそのあたりを期待しているに違いなく、わくわくとページを繰る手ももどかしい状況にあって、何よりも作者がまだ生きているというあたりが大きなアドバンテージであり、既にして続巻を楽しみにしている。