『クラウド アトラス』を観る。デヴィッド=ミッチェルによる長大な小説を172分の映画としているのだが、何しろ六つの時代を描いているので密度が高く、見応えがある。1849年から遙かな未来まで、ストーリーは脈絡がないようにみえて、それぞれの時代に応じた支配と隷属の話として語られ、ハッピーエンドの濃淡こそあれ、各々が結末にかけて解放されるという構造で一貫しており、カタルシスの効いた物語となっている。本邦の『火の鳥』によく似た話で、デヴィッド=ミッチェルは日本に長く居たという話だから、あるいはこれを読んだことがあったかもしれない。
同じ俳優が各時代に役割を変えて顔を出す趣向は内容の面白みをうまく引き出しており、よくできている。新しいQことエン=ウィショーがゲイの作曲家を演じているが、他の時代では女性の役もこなしていて最近、作曲家との同性婚が伝えられただけに目立ってみえる。腐女子か。