『ザ・ウェイヴ』を観る。独裁をシミュレーションしたロールプレイング実習を行ううち集団が異常心理に支配されていく。同じような題材ではスタンフォード監獄実験を扱った『es』があったけれど、本作はドイツの高校を舞台にしているあたり特に剣呑な雰囲気がある。アメリカの高校での実話に基づいているという触れ込みだけれど、ドイツ語による独裁的言動の迫力は腰の入り方が違っていて、地続きのリアリティはなかなかのものである。もちろん映画的な演出はあるとしても、この映画で扱われるある意味で単純な独裁手法に現実的な効果があるのは実際のところ歴史が証明している以上。 心理的な陥穽を描いていく手順は細かいところまで考えられている印象で、劇的な結末がなければ、むしろもっと怖いものになったかもしれない。