ロック・オブ・エイジズ

『ロック・オブ・エイジズ』を観る。原作となっているミュージカルがどうなっているのかは知らないのだけれど、『バーレスク』と選ぶところのない展開に驚いていると、徐々に話は逸脱して、なるほど『トロピック・サンダー』の脚本家の仕事っぽいという雰囲気になっている。
あの映画で得体のしれない黒幕を演じていたトム=クルーズが、今度は大物ロッカーを演じているというのが紛れもない見どころで、その怪演はケイティ=ホームズをして離婚を決意させたと語られるほどだが、さもありなん。生理的な嫌悪感を催させる動きが、訓練された発声で自らヒットナンバーを歌っているという役作り上の達成を上回って、全体としては大いに気色の悪いことになっている。たしかに、やっぱどこかイカレている。『トロピック・サンダー』と異なり特殊メイクも控えめなので、ことは俳優トム=クルーズのイメージにまで立ち入ろうかという感じになのだけれど、問答無用という勢いがあって、これはこれで面白い。
主役であるはずのヒロインとヒーローも頑張ってはいるが、当然のように、サイドに配された大物にフォーカスが当たっていて基本的に作りがパロディなのである。アレック=ボールドウィンのロック親父ぶりは、良い意味で意外性があってカッコいいし、アレンジされた音楽はそれはそれでカッコいいし、なんだかんだで贅沢な映画である。

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