人生の特等席

『人生の特等席』を観る。『グラン・トリノ』以来、久しぶりにクリント=イーストウッド主演の映画だけれど、監督は本人ではなく、映画の製作でクリント=イーストウッドと長く手を組んできたロバート=ロレンツの初監督作品であり、つまり盟友のために現役復帰したようなところがあって、しかし役柄は引退間近のスカウトマンなので、何となく世代交代のイメージが色濃く切ない。映画のラストシーンはイーストウッド映画に特有の遠景と遠ざかる後ろ姿のモチーフ、つまり『シェーン』のあれを踏襲していて、これまた切ない。
話の方は『マネーボール』のアンチテーゼというべき伝説的スカウトマンが己が肉体の衰えを自覚しつつ最後のスカウトの旅の途上にあり、いろいろあって娘との和解を果たすという内容で、予定的に調和したええ話なのだけれど、父娘の葛藤をかなりじっくりと描いた後に、いささか唐突な感じで物語的なクライマックスが用意されている。こちらとしてはクリント=イーストウッドの老スカウトだけでも満足していて、もとより何の文句もないので、もちろんわかり易いハッピーエンドにも特に不満はないのだけれど。
クリント=イーストウッドの人付き合いに不器用な老人というのは最早、演技をこえて当人のイメージそのままで、実は役柄を演じているという感じがあまりしない。

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