『太陽を盗んだ男』を観る。少し前、若いひとに小沢健二の話をしていて、どうにも噛み合ないと思ったら、相手は今や小太りのおじさんとなってしまった沢田研二のことを想起していたという事件があったのだが、この映画のジュリーは全盛期の細さで立派にアナーキーな剣呑さを漂わせている。こんな映画の初見が小学生の頃で、内容も克明に憶えているくらいだから、まあ、ロクな大人にならないわけである。
キャストを眺めてみると菅原文太演じる山下警部の名前が満州男だったりする時代、原爆だの皇居前バスジャックだのといった題材を扱うにあたっては原案にレナード=シュレイダーという米国人が必要だったのかとか、いろいろ面白い。
考証的にはともかく、物語の起伏はまれにみるもので、ラスト30分は『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』かという盛り上がりで、今観ても肩に力が入る。山下警部のテーマ曲『YAMASHITA』は『エヴァ』のBGMにも使われていたけれど、名曲という他ないし、今となってはいろいろあってもやはり傑作というべきではないか。