『少年メリケンサック』観る。クドカン祭りはまだ続いていて、消化をすすめるにつれ幾つかあった話題作をほぼスルーしていたことは真摯に反省をしているところではあるものの、本作は脚本だけではなく監督もやっている作品で、何しろ期待通りの勢いと面白さなのでこれまで素通りしてきたことについては重ねてその不明を恥じたところである。いや、宮崎あおい最高。
バンドのツアーというのは人生の縮図であり、メンバー間の葛藤は標準装備なので、このあたりを題材とした映画は古くから数多あるわけだけれど、ロブ=ライナーの『スパイナル・タップ』あたりよりも、本作の設定と雰囲気はビル=ナイが出演していた『スティル・クレイジー』に近く、あれも一本調子な復権の物語というわけではなかったが、『少年メリケンサック』のほうは輪をかけてパンクであって、宮崎あおいはやたらと元気であり、音楽はおいておくとしても、周到に企まれた笑いはツボに入ると言葉通り腹を抱えることになるくらい可笑しく125分があっという間。いつもの大人計画関係の役者はほぼ出てこないのだけれど、1985年を振り返った業界噺という点では、のちに『あまちゃん』として昇華する視点もあって楽しめる。まぁ、あれだ、わかるやつだけわかればええ。