『歩いても 歩いても』を観る。そもそも邦画の熱心な観客とは言い難いだけに、是枝裕和監督がどのような手腕を見せてくれるのか、あまりイメージがなかったのだけれど、いやこれがジャパニーズ・ホラーというものではないかというくらい怖いの、樹木希林が。
10年前に子供を助けようとして亡くなった兄の命日に気詰まりな帰省をするという題材からして、物語に内在する緊張の種類は察しがつくし、つまり頑固な父とソリが合わない次男の葛藤とか前夫と死別した子連れの嫁が感じる温度とか、類型といえば実に類型的な人間模様ではあるのだけれど、細部の積み重ねはよくあるドラマとはちょっと違ったテンションを醸し出している。
YOUが演じる娘との掛け合いで、物語の序盤、樹木希林はしきりとおさんどんをしていろいろ世話を焼くのだけれど、昼ご飯の出前寿司に続き晩はやはり出前とおぼしき鰻という奇妙な違和感とか、ぽこぽこと直接的に吐き出される毒を含んだ言葉とか、見終える頃にはぐったりしていて、退屈な映画でないことは確か。