ロメロの造形によって同時代における共通のアイコンとなったゾンビは、今日に至り創造されるコンテンツの一大潮流を形成しているといっても過言ではなく、ゾンビと滅亡ものを愛好しているとの自覚があったとして、その全てをフォローすることはほぼ不可能と思えるほど流れは広がっているのだけれど、当方の場合、特にテレビシリーズとマンガに関しては手薄になっていると反省せざるを得ない。
シーズン4だの5だのと際限なく続いていくテレビシリーズの追従は既に諦めているようなところがあるにして、本邦が誇るマンガコンテンツにも見るべき作品が幾つかあるという認識はもちろんもっていた。
『アイアムアヒーロー』もそのひとつで、最近では14巻が刊行されてそれなりの大河感も醸成されており、着手の頃合いであろうというわけでこれを読み始める。特に立ち上がりの一巻をまるまるかけ、日常の果てに怪異が顔を表すという導入の巧さに唸り、ゾンビものの要諦や崩壊の開始にありとの思いを新たにする。この辺りに比べるとロードムービーパートや戦時共同体の内部抗争といったあたりは、それなりと見えて、構成に関していえば幾つもの崩落をストップモーションで並べて欲しかったという気がしないでもないけれど、群像劇ではなくて、そもそもゾンビとは食い合わせの悪いヒーローものの背骨を導入しようという冒険が主旨ならばこれも仕方ない。