この世の終わりに聞こえる音があるとすれば、天空を揺るがす轟音であるに違いないのだが、この日、聞こえたのもジェット機の飛行音のようで、ただしやけに遅い時間帯に珍しいことだと思ったのである。山々の峰を月が照らす明るい夜のこと。
報道によれば、佐久・蓼科地方一帯に響き渡ったこの音に多くの苦情が寄せられたものの、音源となる飛行機の運行記録はなく何の音だったかは不明という話で、しかしあの時、聞こえたのはリアルな肌触りをともなった轟音だったので、ぞわりと薄気味の悪い思いがしたのである。この世の終わりに聞こえる音があるとすれば、きっとあんな音に違いないのだが。