ハヤカワの近刊、藤井太洋『オービタル・クラウド』を読む。テクノスリラーというジャンルがSFとマンガの陰となっているのは、そもそも地続きの技術で大風呂敷を広げるのが難しいということがあると思うのだけれど、『Gene Mapper』と同様、一介のフリーランサーが大きな陰謀を明かしていくストーリーは、どこかで聞いたようなエピソードを交えながらぐいぐいと進んで気がつけばなんともスケールの大きな話となっている。有能な人間しか出てこない無理は無理として、『サマーウォーズ』あたりの先行作品の心地よさを想起させる雰囲気があるので、いろいろと満足感が高く、面白い。