『オール・イズ・ロスト』を観る。80歳手前になったロバート=レッドフォードが極限状況での一人芝居を打っているというだけで、何がしか感じ入るものがある。監督と脚本は『マージン・コール』で才気をみせていたJ=C・チャンダーで、本作でもなかなかの仕事ぶり。セリフというものがほぼ存在しない状況を寡黙な男の行動で説明しきっているあたりは素晴らしい。
何より、ロバート=レッドフォードである。災難の連続に愚痴もいわず、ほとんど淡々と対処していく様子はどうだ。そして腹の底から湧き上がる四文字言葉による呪詛は本編のヤマ場であるといえよう。邦題には『最後の手紙』と泣かせる副題が付いているけれど、徹頭徹尾ハードボイルドなのである。堪能した。