『スリ』を観る。ジョニー=トーの2008年の監督作品で、香港のスリの話といえば邦題の通りなのだが、フィルムノワールと思いきや、美女のためにスリを生業とする男たちが人肌脱ぐというストーリーで流血はなく、登場人物は一癖あっても根はいい人ばかりで、こじんまりとはしているもののちょっとした人情話になっている。監督が意図しているとおり、香港の街並みは良き時代のよすがとして切り取られ、長回しによる連続したスリのシーンなどは技巧がたっぷりと込められたものであり案外、見応えがある。そしてヒロインのケリー=リンも美しいので、こちらとしてはあまり文句もない。