『ヒーロー・ネバー・ダイ』を観る。ジョニー=トーの1998年作品で、映像はさすがに古いけれど、いかにも香港ノワールといった前半から、ひねりにひねった仇討ちの展開となる結末にかけて、例によってハリウッドにはあり得ない話が職人的に手の込んだ画面にのせられているので映画としての満足は十分に高い。懐かしい日活の正系に連なる活劇であるということでよいのではないか。
香港映画の常として何しろ狭い土地のことであるから市街の風景は見覚えのある範囲に限られる傾向はあるにして、物語の半分近くはタイを舞台にしていて箱庭的な印象を脱している。海外ロケ敢行、という惹句が映画のウリとなった時代を思い起こさせて好ましい。
『MAD探偵』で元刑事のバンを演じているラウ=チンワンの若き日、これまた普通とは言い難い役回りを違和感なく演じているのも見どころと言えて、どうやら斯界ではそういうポジションの人である。いろいろと発見があって面白い。