ブライトの憂鬱

『ブライトの憂鬱』を読む。竹宮惠子の『私を月まで連れてって』は30年ほども前、愛読したマンガであり、ブラッドベリ調の世界観はほぼこのイメージで再生されるから自分史において受けた影響は甚大なものがあるのだけれど、その直接の続編ともいえる本作については、いつか読んでみようと思いつつ、今日まで放置となっていた。
30年前の作品の20年後に書かれた続編をその10年後に読むという、思えば壮大な取り組みであるけれど、何しろもとは繰り返し読んでいるので地続きの話として楽しむ。『私を月まで連れてって』の最後のエピソードで生まれた双子の兄の方、ブライトを主人公とした物語ではあるけれど、宇宙軍准将となったダン=マイルドとその妻ニナも主要登場人物として活躍しているのでファンにとっては嬉しい。
物語のつくり自体は、古典SFチックな単話エピソードの積み重ねであった前作とは大きく異なり、主人公の成長譚というところがあって、魔法的であった世界観もどこかハードSF寄りとなっている感じだけれど、そのあたり違いも時代の空気感を反映している印象で興味深く、堪能した。