『マーシャル・ロー』を観る。911以前、米国の中東政策を遠景に、連続する米国本土でのテロを扱った映画で、テロの結果として市民の権利が蹂躙され、中東の人々が人種差別と迫害を受け、理念が壊死していくあたりが主眼の話。WTCが崩壊し国土安全保障省が発足してNSCが不法な盗聴を行うという世界にあって、その慧眼ゆえ一時期は忌避され、今では忘れられている気がするけれど、先見性は注目されてしかるべきであろう。
デモに対して州兵が動員されているのが現実なのだから、作中のような事件のエスカレーションの果て、軍隊がニューヨーク市内に展開することになっても驚かない。状況をシミュレーションしたサスペンスとして、事件は現実が想定を上回っているとして、ブルックリンに部隊が展開する後半は今では妙なリアリティがあって荒唐無稽と感じた当時とは印象が異なってみえる。