引き続き2014年に観た映画のこと

振り返ると、いつも積み残したような気になるその年の映画の総括だけれど、傑作といわないまでも楽しんだ作品は多かったし、むしろ観て後悔するようなものは滅多にない。
スティーヴン=ソマーズといえば『ザ・グリード』『ハムナプトラ』の脚本・監督だから、当方の認識ではひとかどの人なのだけれど、ゼロ年代はシリーズ化作品の製作側に回って影は薄かった。ひさびさに脚本まで書いている『オッド・トーマス』は主演にアントン=イェルチンという個性を据えて、大作ではないものの面白い作品に仕上がっていた。ヒロインのアディソン=ティムリンは物語の魔力によって忘れがたく可憐な印象を残しており、これだけでも手柄である。
映画的階梯でいえばBクラスっぽいところでも『サプライズ』はジャンル映画のさらに狭い世界をうまく継いでいるとみえた。たとえば『スノーピアサー』も原作付きとはいいながら、神話類型というにはあまりにも近代的な先行作品の影響が窺えて、クリエイションというのは単独ではあり得ないということを強く感じたわけだけれど、その極北が『THE NEXT GENERATION パトレイバー』であり、アニメの実写化による再演がそれなりに楽しめたのは意外だった。本邦における実写化の流れがこの分野でほかのメジャー作品に波及する可能性があると思うのである。『エヴァ』の実写化とか。特撮はもちろん樋口真嗣で。
2013年は『あまちゃん』に始まり終わり、宮藤官九郎の映画も慌ててキャッチアップしたようなところがあったのだけれど、今年の初めころに観た『中学生円山』によってその熱もピタリと止まり、ある意味で破壊力はあったようである。最近のテレビドラマの視聴率も芳しくなかったという記事を読んだけれど、そもそも大向こうにウケにウケるというのがらしくないのであって、引き続き邁進していただきたい。関連する大人計画では『キレイ』の3回目の舞台があった年だし、原点があれば迷いもなかろうと思う。
かわって、ジョニー=トーの映画を集中的に観た年ではあった。そのなかでは『MAD探偵』のインパクトがひときわ強かったけれど、幾つもの作品を観ていくと香港映画の閉塞みたいなものも垣間見えて、同じロケーションが使われる地理的な問題もさることながら、同様の面子によって繰り返し演じられるフィルムノワールからは意図せぬ文脈が立ち上がっているように感じられたものである。
今年を振り返る記事では『ウルフ・オブ・ウォールストリート』が推されていることが多かったように思うのだけれど、当方の感想では自分でも意外な低評価にとどまっていて、結局は脚本の出来が甘かったと思うのである。いかに露悪的であろうとも、詐欺行為の本当を語らないピカロによる、批判性を内包しないピカレスクというのはつまり自己弁護の表現であって、露悪の部分は非常識であろうともただ本当にあったことに過ぎない。
年末にかけて観た映画では老境のロバート=レッドフォードの、しかしその力強さが画面を支配していた『オール・イズ・ロスト』が秀逸で、この題名も挙げておきたい。