『MI5:消された機密ファイル』を観る。陳腐な邦題のテレビ映画と考えてはならない。原題は『Page Eight』。『SHERLOCK』のBBCが製作で、ビル=ナイが主演である上、レイチェル=ワイズがミステリアスな隣人となれば、そこらの大作よりもよく出来ているのではないかという予想はあるにして、実際にはその期待値を大きく上回る。英国エスピオナージュの良質な部分を濃縮して、ビル=ナイが徹頭徹尾ハードボイルドで事実とものごとの価値を見抜く情報分析官を演じているのだから面白くないはずがない。眉のわずかな動きだけで感情を表現するビル=ナイという役者の、もともとファンではあるけれど、これはハマり役。
派手な事件は起きないのだけれど、食卓の下の足の蹴り合いと背景のある会話だけでテンションは維持されており、ラジオの天気予報が形而上的な嵐を想起させる演出は古典的でありながら実にカッコよく処理されていて感涙もの。傑作。
単発のドラマでは、あまりにも勿体ないキャラの立ちっぷりなのだけれど、案の定というべきか、ビル=ナイ演じるJohnny Worrickerを主人公として『Turks & Caicos』『Salting the Battlefield』と、続編がふたつ既に作られているみたいで、さすがに英国の民度は高いと感心せざるを得ない。