『MUD』を観る。マシュー=マコノヒーはもともと好きな役者だけれど、特に最近はいい役が増えてきた。アーカンソー、ミシシッピー沿岸の田舎町を舞台に、主軸は主人公の少年が風来坊を助けて大人になるという話だけれど、女子に翻弄される愚かな男という構図が幾通りも登場して切ない奥行きには欠かない。それでなくとも、父親に”Yes, sir.”というような社会の話ではあるから、人生は暗く長い河という宿命感が漂ってはいるのだけれど、そのなかで主人公の少年を演じたタイ=シェリダンには若年ながらハードボイルドな雰囲気があって悪くない。結末にかけてはサム=シェパードの渋過ぎる見せ場があったり、マイケル=シャノンが出演していたり、見どころは多い。マイケル=シャノンの役回りは目撃者のはずなのだけれど、事情により付け足されたと思しきラストがそれを無効化しているのが残念といえば残念。