『ホーリー・モーターズ』を観る。レオン=カラックスのファンだったことなどないが、冒頭からあからさまに前衛芸術臭を放っている本作も、ある意味で面白く観ることができたのだがそれは滲み出るコントっぽさに対する薄ら笑いであり、映画に求めている面白さとはちょっと違うような気がする。とはいえ、唐突に伊福部昭の音楽を繰り出してくるゲージツカぶりは嫌いじゃない。ドニ=ラヴァンによる怪人メルドは『TOKYO!』のなかの一作にもとは登場していたけれど、よほど気に入ったとみえて再演している。
『ポーラX』の監督の13年ぶりの長編と持ち上げられるけれど、レオン=カラックスの芸風はハリウッドならチャーリー=カウフマンに通じるものなので、意外にも鼻持ちならないところはほどほどであり、訳が分からないなりに唐突なインターミッションなんかもかっこいいし、いろいろと自由であることは認めざるを得ない。