『あと1センチの恋』を観る。幼馴染の二人が互いに好きと言い出せないまますれ違いを続けて幾星霜という話で正直、既視感の拭えないストーリーラインだが、もとは人気の小説でそちらは手紙やチャットのやりとりで全編が構成されている風変わりなつくりらしい。森見登美彦の『恋文の作法』だというならそれはそれで面白いかもしれないけれど、おそらくはハーレクイン的な世界なので迂闊には近づけない。
本編のほうはオーソドックスな恋愛映画なので、書簡形式なら多少は迂遠となったはずのあれこれが前景化しており、その率直さが見ものといえば見もの。禍福は糾える縄のようではなく、悔恨と落胆で語られるので奥行きはほとんど感じられないものの。主人公の二人は新進で多少の新鮮さがあって、ジャンルものとしては普通の出来。