『アバウト・タイム』を観る。これもまたビル=ナイを目当てにしており、副題に『愛おしい時間について』とある甘ったるさには警戒心すらあったのだけれど、時間ものの一変形として多少のパラドクスは内包しつつも、最後はきれいにおさめていて、正直ちょっと感動したわけである。まさに愛おしい時間についての話であり、これは傑作。
監督は『ラブ・アクチュアリー』と『パイレーツ・ロック』のリチャード=カーティスで、もともとビル=ナイのかっこよさを引き出すことにかけては一流の手腕があるわけだが、彼に父という属性を与えつつ、切ないストーリーに仕立てた脚本も監督当人によるものである。
SF属性では『エターナル・サンシャイン』、親子属性では『エリザベスタウン』というオールタイムベスト級の映画をそれぞれ想起させる文脈をもちつつ、垢抜けない外見が感情移入を容易にする主人公のドーナル=グリーソンとか、意表をついた前髪もキュートと言う他ないレイチェル=マクアダムスとか、役者も実に魅力的で、時間演出の方法も楽しく124分があっという間。
同じようなテーマではアダム=サンドラーの『Click』があったけれど、あれよりもだいぶ前向きな語り口で、トラウマをつくるか教訓を残すかに分かれる創作スタンスの違いは高く評価したいわけである。
ロマンスとしてはイギリス製映画のいちばん上質な部分を持ち合わせているし、父と子のシーンは深く心に残る。おすすめ。