『ジャージー・ボーイズ』を観る。クリント=イーストウッドに音楽の映画を撮らせたらもちろん間違えようがないし、もとのミュージカルの舞台俳優を使っていることもあってパフォーマンスにも安定感があり、134分が長くない。題材はフォーシーズンズの栄光と離散で、概ねオリジナルの筋書きに拠っているとみえるけれど、ショービジネスの成功や没落の物語はそれぞれが実話をもとにしているというのにいつもどこか既視感があって、この映画も例外ではない。ドラッグの影が見えないのが意外なくらいだが、これも天災のように降りかかってきて妙な辻褄をあわせている。ここにあるのはある種の神話類型といってもいいのではあるまいか。
クライマックスは誰でも知っている『君の瞳に恋してる』で、主演のジョン=ロイド・ヤングの歌いぶりも堂に入ったものだが、森進一を想起したものである。若き日のクリント=イーストウッドがテレビのなかに一瞬、登場するのはご愛嬌。