デビルズ・ノット

『デビルズ・ノット』を観る。1993年、メンフィスで実際に起きた三人の少年の殺害事件を題材にして、魔女裁判の様相を呈することとなった捜査と裁判の顛末を描いている。コリン=ファースが調査員の役を演じて主演しており、リース=ウィザースプーンが被害者のひとりの母親の役。『スウィート ヒアアフター』のアトム=エゴヤン監督で、その語り口はセンセーショナルなものではなく、深く沈み行く。新事実を創り出そうという姿勢はなく、杜撰な裁判を描きながらも節度は保たれている。よくよく考えるとコリン=ファースの調査員は首を突っ込んだというだけで何ひとつ役に立っていないのだけれど、全体に起伏が抑制的なので、うかうかしているとそれに気がつかないほどなのである。
そもそも悪魔的な儀式のために三人の子供が殺されたという話を陪審が信じたこと自体、信じられないが、事件の真相を示唆しているかにみえる幾つかの断片があるにして、初動の見込み違いから必要な情報は圧倒的に不足しており、これが明らかになることは金輪際ないのではあるまいか。

ハーモサビーチ