『ノスタルジア』を観る。アンドレイ=タルコフスキーがこの映画を制作するためにソビエトを出国し、完成後に亡命を宣言した映画。ストーリーはすでにして亡命者の彷徨のようだけれど、レイアウトとカメラワークからなる映像は光量の増減を多用しながら例によって独特の美を表出していて見応えがある。わけても奥行きの美しさは無類。
イタリアを舞台にロシア人作家を主人公として、1+1=1なるメッセージがキーとなる場面の壁に書かれている物語であれば台詞の意味内容にはさしたる重要性が与えられておらず、結果として詩集が火に焚べられるイメージが現れたりするけれど、ダイアローグの画面上の関係性から文脈が読み取れるあたりはイタリア・ソビエト合作という作品における意図的な仕掛けではあるまいか。