バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を観る。冒頭、二尾の隕石落下の映像で『retrograde』のPVを想起して、サウンドトラックはJames Blakeかと身を乗り出したのだけれど結局、全く関係なく、こちらは全編アントニオ=サンチェスのドラムスコアが基調となっていて、これはこれで素晴らしく格好よい。
基本的に長回しを繋いだ映像も、舞台と舞台裏の境界を曖昧化するために必然性の感じられる使い方で、アカデミー賞の監督賞、脚本賞、撮影賞に加え作品賞という畳み掛けにも納得がいく。映画的に非常に満足感の高いつくりとなっている。
マイケル=キートンが主演で、つきまとう心の声がそのままバットマンという小ネタはともかくとして、本人の経歴に沿った設定にはリアリティがありすぎて気詰まりなほどだし、演技にも気合が入っている。この存在感が映像と音楽に負けていないところがまずすごいのだけれど、たとえば冒頭、異様な状況でこの人のブリーフ姿が登場するのが中盤の山場の印象を加減しているあたり、細かいところまで計算されていることが窺われ、全体として完成度の高い映画というべきであろう。

納涼床