フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を観る。本読みとしては自分が読むべき本とそうでない本の峻別ぐらいはできるようにはなっていて、累計1億部とかいう原作の方はもちろん敬して遠ざける部類に入っているのだけれど、これが映画になると何故か観てしまうのは我ながら不思議ではある。そんなわけで、内容についてはほぼ予備知識なしではあったのだけれど、物語構造が『トワイライト』と同じであるということは開始まもなく見当がついて、そのこと自体は興味深かったし、調べてみるともとの小説は『トワイライト』のファンノベルだという話で、妄想が本家の背骨を捉えているあたりには感心した。「マミーポルノ」とも言われているらしいけれど、映画としてはそれなりにきちんと撮られた映像で中盤にミスター・グレイの秘密が明かされるあたりは、あまり誇張なくアタマがくらくらしたものである。別の意味で面白い。
原作の小説は知らないが、映画としてはヤマもなくオチもなしという宿命的な構造があり、後半は主人公の死んだ魚のような目が気になっていたたまれないし、結末の処理はほぼ投げ出すようなひどいもので、どうやら制作にかかわった人たちはこの作品に愛着をもっていないという記事を読んでさもありなんという気がしたものである。三部作の脚本に原作者が乗り出してきているという話もゴシップとしては面白いけれど、いろいろやめておいた方がよいのではあるまいか。『トワイライト』の映画もだんだんどうでもいい感じになっていき、クリステン=スチュワートが出演しているのにそもそも終わりの方は観てもいないけれど、本作の続きがあったとしても観ることはないであろう。

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