『プロミスト・ランド』を観る。マット=デイモンが脚本・主演でガス=ヴァン・サントが監督を務めるという『グッド・ウィル・ハンティング』以来の組み合わせだけでも期待は高まるというものだが、2012年当時はハイプに近い盛り上がりを見せていたはずのシェールガス開発が環境と共同体に与える影響を題材にした意識の高い内容で、しかもフランシス=マクドーマンドやジョン=クラシンスキーといったちょっと奥行きを感じる好みの役者が脇を固めているのでかなり見応えがある。
マット=デイモンが演じるのはシェールガス開発のための権利買収を行うエージェントで、それなりに複雑な内面をもちつつある種の信念をもとづいて仕事に取り組んでいる造形となっており、この人物が住民の懐に入るのに長けて硬軟使い分けるスマートさをもっているあたりが極めて手際よく描かれていたりする脚本の質は高い。そうはいっても自己を合理化することが出来ていないわけではない微妙な境地にある主人公が回心に至るピークの作り方も二段重ねとなっていてうまい。
細部に感じる完成度の高さがこの作品の魅力だろうが、テーブルにおかれた提案の賛否を決めようというときに我々は何を考えるべきなのかというメッセージについては、足下の本邦の状況に思いを致さずにはおられず、今観るべき映画というべきではないか。