『リトル・フォレスト 夏・秋』を観る。原作の漫画は未読。岩手県の山里で、自分で食べる分くらいの農業を営みながらひとり住んでいる及川いち子が、過去を振り返り思いを巡らせつつ、季節の恵みを丹念に調理して味わうエピソードを重ね、四季を過ごしていく。いち子を演じているのが橋本愛、その友人が松岡茉優。
いわゆるスローフード、スローライフを題材にはしているけれど、そこらの「ていねいに暮らす」系とはひと味違ってガチの農作業をやっている。若い娘が山間の一軒家にひとりで寝起きし、生活を工夫しているばかりではなく、橋本愛のセリフの八割は占めようかという様々なレシピには伝承の知恵と考察が込められているので佇まいに凄みがあって、何しろためになる。
盆地の底にある集落での生活、暑さよりは湿度の高さをどのように凌ぐかという夏、多くの収穫がある秋から初冬のエピソードは、派手な事件はないにして入念な手順の語りがやがて物語となって、映像も美しく2時間が長くない。