映画 深夜食堂

『映画 深夜食堂』を観る。もとは人気のある漫画で、同じくヒットしたテレビ番組のキャストでの映画化みたいだけどいずれも未見。震災が重要な背景として語られる現代劇でありながら、昭和の懐かしさが漂う路地のめし屋を舞台にしていて、これが新宿という設定は納得しがたいが、オーソドックスな人情劇なので事前知識がなくとも十分に楽しめる。この食堂はつまりファンタジーの舞台なのだが、セットではあるものの作り込まれたそのディテールが画面に力を与えており、どこか懐かしいという路線がヒットのフォーマットとなっている邦画のノウハウがうまく活かされていてなかなか面白い。
小林薫が主人公といいながら、この寡黙な店主に絡む女優たちによって物語が編まれるあたりは邦画の伝統を踏襲しており、一方で震災の話題が時間軸を手前に引き寄せることで古臭さが回避されるという、なかなか巧妙な仕掛けになっている。
配役の手堅さも際立っていて、高岡早紀、多部未華子といった主要なキャストは、当人のイメージから外れないところで役回りが振られており、何かと保守的ではあるものの悪くない。
クライマックスに登場する田中裕子はトリックスターとも狂言回しともつかぬのだけれど、異様な口上はなかなかのものでこれには見入った。

本能寺