『誰よりも狙われた男』を観る。フィリップ=シーモア・ホフマンが最後に主演した作品ということになる。ジョン=ル・カレの原作を『The American』のアントン=コルベインが監督していて、同様に静かな印象のエスピオナージュとなった。ル・カレが原作の映画はこのところアタリが多い気がするけれど、こちらが歳を重ねたからだという気がしなくもなくて、玄人好みの映画であろう。
この人相の悪い、短躯のスパイがどのようなゲームをしているかが徐々にわかってくる中盤から、急激に転調するクライマックスへの緊張感はひりひりしたもので、考えてみれば誰も死んでいない諜報戦だけで、このテンションを維持しているのだから、原作もさることながら映像化の手腕もなかなかのものである。フィリップ=シーモア・ホフマンはキャリアの中でも屈指のカッコ良さで、このエンディングを受けた続編を望めないのは残念という他ない。
この作品のヒロインもレイチェル=マクアダムスで、このところ随分、活躍しているみたい。